masakimary

静かに過ごしていきたい

場面緘黙症の女子学生が本やアプリなどを紹介するブログです。様々な記事を書いていきたいと考えています。何か気になることやご意見などありましたら、お気軽にコメントしてください。

あなたをさらいに夜がくる―ー。夜道探索アクションゲーム第2弾が待望の公式ノベライズ!『深夜廻』を読んでみた

 こんばんは、masakimaryです。

 今回は、日本一ソフトウェアが贈る、夜道探索アクションゲーム第2弾が待望の公式ノベライズ!『深夜廻』を紹介します。
 ※ネタバレ注意

内容ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 少女たちはお互いを探して、夜闇を彷徨う。
 夏休みが終わるころ。ふたりの少女、ユイとハルは裏山へ花火を見に出かけました。
 「ふたりで花火を見るの、今年でさいごになるんだね…」
 夜が更け、帰り道がわからなくなってしまったふたりは、繋いでいた手を離した隙にはぐれてしまいました。
 「ユイを」「ハルを」「「さがしにいかなくちゃ」」
 不気味な夜の街でお互いを探し、彷徨い歩くユイとハル。
 二人の未来に、待ち受けるものとは―?

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登場人物ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ハル・・・優柔不断で気弱な少女。青いリボンをしている。小さな頃から「お化け」のような存在を認識できる。
花火を見に裏山へ出かけた帰り道にユイとはぐれてしまう。

ユイ・・・ハルの親友。いつもハルを助けてくれる勇敢な少女。赤いリボンをしている。空き地で2匹の犬(チャコとクロ)を飼っている。

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ハルとユイの前に現れる異形のものたち

 花火を見に裏山へ出かけた帰り道、ハルとユイは手を離した隙にはぐれてしまう。

 不気味な夜の町でお互いを探し、彷徨い歩くハルとユイの前に、〈コトワリさま〉や〈よまわりさん〉などの様々な異形のものたちが姿を現す。

裏山へ向かうハルとユイ

 やっとのことで出会ったハルとユイであったが、ハルにはユイを認識することができなかった。
 そこでユイは、自分が既に死んでいることに気づく。
 ユイは自分の死の真相を知るため、ハルを飼い犬のチャコに任せて裏山へと向かうのであった。

 ユイからの手紙を読んだハルは、ユイが既に死んでいるということを受け入れられなかった。
 そこでハルは、「幽霊でもいいからユイに会いたい」と、手紙に書かれていた裏山へと向かうことにした。

ユイの思い出

 裏山へ向かう前に、ユイは後悔をしないよう、思い出の場所へ寄ることにした。

 そして最後に、ユイは自分の「家」に寄った。
 ユイにとっての「家」とは、帰りたくない場所であり、「家」とも呼びたくない存在であった。

 ある日突然父親が失踪したことで、母親は変わってしまった。
 家事を一切しなくなってしまったのである。
 部屋は荒れ、ゴミに埋もれていった。ガスや電気が止まることもあった。そして母親は、ほとんど家に帰らなくなってしまった。

 ユイは父親が失踪する前に、独り言を話すのを聞いた。
 そしてある独り言をきっかけにして、父親は失踪したのである。

ハルを救いたいユイ

 ハルは前から変なことを言う子であった。
 2人で遊んでいるときも、ハルは何もない場所を見つめて動かないときがあった。そんなときのハルは、ユイには見えないものを見ていたのだろう。
 今思えばハルはずっと前から、「なにか」に呼ばれていたのかもしれない。

 ユイは昨日の記憶を振り返る。
 ユイは引っ越すことをハルから告げられた。ハルの前では明るく振る舞ったけれど、内心はひどく動揺していた。
 あまりに急なことで、悲しみやつらさなどの感情さえも忘れて家路についたユイは、思いつめるような顔をしたハルのことを心配してハルの家に戻った。
 ハルは家から出てこなかった。花火を見に行く約束をして、十分も経っていないのに。

 「誰かが呼んでる」とハルは言っていた。その誰かに呼ばれてしまったのならーーー山だ。
 その夜、ユイは飼い犬のクロと一緒に裏山へと向かった。ハルを隠したものから取り返すために。
 

父親の真実

 奥深い山道を歩き続けるユイは、自分とクロの残像を追いかけていた。
 そこでユイは、失踪した父親の残像に出会った。
 後を追いかけたユイは、父親の死体と父親の最期の言葉が綴られたノートを見つけた。

 そしてユイは真実を知った。
 父親は研究中に禁忌に触れてしまい、その結果として「なにか」に魅入られ、家族を巻き込まないために姿を消し、一人寂しく山の中で死んだということを。
 

怨霊と化したユイ

 〈コトワリさま〉から逃げ出したハルは、ようやくユイとの再開を果たす。
 しかし、ユイは寂しさからか怨霊と化してしまっていた。
 ハルの言葉によって一瞬だが正気を取り戻したユイは、赤いリボンを残して消えていった。 
 
 裏山の頂上に辿り着いたハルの前に紙飛行機が落ちてきた。それは、家庭環境や飼い犬であったクロの死、ハルの引っ越しについての心境が綴られたユイの手紙であった。
 この手紙は、ユイの誰にも言えないつらくて寂しい気持ちを綴った遺書のように感じられた。

 しかし、落ち葉の中からユイのナップサックを見つけたハルは、ユイの絵日記帳の中から自殺するような様子が見られないことに疑問を抱く。

ハルの前に現れる〈コトワリさま〉

 そして再び、ハルの頭の中に謎の声が響いてきた。
 そして、「もういやだ」と叫ぶと〈コトワリさま〉が現れた。

 謎の声からハルを助け、洞窟への入り口を開けてくれる〈コトワリさま〉。
 なぜ自分を助けるのか?
 ハルの問いに答えることなく、赤い裁ち鋏を残して姿を消す〈コトワリさま〉。

 赤い蜘蛛の巣を〈コトワリさま〉の裁ち鋏で切りながら、ハルは洞窟を進んでいく。
 どうやらハルは、以前にもこの場所に来たことがあるようであった。

ユイとの別れ

 ユイとハルの残像を見つけて追いかけていたハルの前に、謎の声の主である《蜘蛛のようなもの》が現れた。
 《蜘蛛のようなもの》を撃退したハルは、化け物へと変わってしまったユイに言葉をかける。

「イッショニキテ」と言葉を繰り返すユイは、ハルの手に赤い糸を絡ませていく。
 ユイに対して助けられなかったことを謝るハルは、「こんなユイを見るのはもういやだ!」と叫んだ。
 叫びとともにハルの前に現れる〈コトワリさま〉。
 そしてハルは、ユイとの縁を切る代償として左手を失った。

 出血多量で意識のないハルを洞窟の出口へと運ぶユイ。そして出口で出迎えてくれるチャコ。
 やがてハルとユイは、お互いに手を離すのであった。
 

ユイを想うハル

 ハルは、チャコと一緒に裏山で空を見ていた。いつの間にかこの場所は、ハルたちの散歩コースとなっていた。

 ユイの命の灯は、ここで消えてしまった。ハルにとっては、世界で一番つらい場所。
 だからこそ、目を背けない。
 この町に、ユイはいた。そして、自分と出会ってくれた。
 毎日この場所に来ていたのは、ユイにまた出会いたいから。そんな奇跡は起きないと分かっていてもーーー。
 
 この場所へ通うこともできなくなる。
 新しい家へ引っ越すため、この町を出発しなければならない。
 しかし、お別れはいらない。
 ユイとはずっと友だちだ。一番の親友はユイだけ。


 惜しむ気持ちを振り切るように、木に背を向ける。尾根を撫でるように、強い風が吹く。
 そこにユイの確かな気配を感じながら、ハルは裏山を後にするのであった。