masakimary

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女子高生探偵・ももとあおの絶対に負けられない推理勝負、開幕!『友達以上探偵未満』を読んでみた

 こんばんは、masakimaryです。

 今回は、女子高生名探偵・桃青コンビ誕生! キュートで企みに満ちた本格ミステリ『友達以上探偵未満』を紹介します。
 ※ネタバレ注意

内容ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 三重県立伊賀野高校の放送部に所属する伊賀ももと上野あおは大のミステリ好き。
 ある日、部活動で訪れた伊賀の里ミステリーツアーで事件に巻き込まれる。探偵に憧れる二人はこれ幸いと、ももの直感力とあおの論理力を活かし事件を解決していくが…? (「伊賀の里殺人事件」)。
 見立て殺人? お堀幽霊の謎? 合宿中にも殺人事件…。
 勝てばホームズ。負ければワトソン。この世界に名探偵は二人も、いらない。

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登場人物ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

伊賀もも・・・三重県立伊賀野高校の放送部に所属する高校1年生。前向きで明るく、感情表現が豊かな少女。伊賀忍者の末裔。
名探偵を目指しているが、推理力は皆無に等しい。芭蕉好きで俳句好きだが、人前では一度も俳句を詠んだことはない。

上野あお・・・三重県立伊賀野高校の放送部に所属する高校1年生。クールで口数の少ない少女。
ももと同様、名探偵を目指しており、推理力に長ける。

伊賀空・・・ももの兄。伊賀署の刑事。
ももとあおが解決した事件を自らの手柄にする代わりに、事件の際はももたちに協力している。

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・伊賀の里殺人事件

 ・登場人物
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 ももとあおは、放送部の活動のため、伊賀の里ミステリーツアーを訪れた。
 しかし、クイズラリーの最中に、参加者の一人である茅町一郎が俳聖殿で絞殺体となって発見される。そして茅町一郎は偽名であり、本名は丸山佐助ということが明らかになった。
 翌日、広小路愛希が浴室で絞殺体となって発見される。
 その後、丸山のスマホから愛希の連絡先が見つかり、2人は知り合いであったことが判明する。 
 
 
 愛紀のストーカーである佑紀がイベントに参加することを知った西大手は、佑紀を諦めさせる最後の手段として、愛紀を殺害する計画を練った。更に、茅町というダミーを作り上げて一人二役を演じ、佑紀が容疑者として疑われないようにした。
 その一方で、丸山と愛紀は正樹を殺害しようとしていた。そのため、丸山は愛紀と同じ黒忍者の姿でツアーに紛れ込んだ。そのことを知らない西大手は、愛紀と間違えて丸山を殺害したのであった。
 間違いに気づいた西大手は、愛紀に丸山を見かけたことがあると仄めかし、愛紀の部屋で彼女を殺害したのであった。
 全ては、佑紀を想うがゆえの殺人であった。
 

・夢うつつ殺人事件

 美術部1年生の相生初唯は、うたた寝する中で男女の殺人計画を聞いてしまう。計画の相手は、美術部2年生の愛宕匡司であり、七不思議であるお堀幽霊の仕業に見せかけて、殺害される恐れがあるという。
 その後、初唯のカバンには、犯人の脅しであると思われるお堀幽霊の赤い手形が残されていた。
 数日後、愛宕匡司が絞殺体となって発見される。そして、初唯のカバンと同様、愛宕のカバンにもお堀幽霊の赤い手形が残されていたのであった。


 初唯の聞いた殺人計画は、美術部の左右にある部屋の窓から聞こえる二組の会話が、偶然にも一つの会話となって殺人計画のように聞こえていただけであった。
 初唯のカバンについていた手形は、女子部員が初唯に対する逆恨みで残したものであった。初唯はそのことを認識していなかったため、自分に対する嫌がらせだと気づかなかったのである。

 そして、お堀幽霊の見立てによる愛宕の殺人計画の話を知っていたのは、初唯の他には親友の田端しか存在しない。
 愛宕の彼女である田端は、美術室で二股の現場を目撃したことで、見立て殺人を計画したのであった。
 しかし、お堀幽霊は右手の手形を残すのに対し、愛宕のカバンには左手が残されていた。美術部員ではない田端は、手形に使用するためのブロンズ像を見つけられなかったのである。
 
 

・夏の合宿殺人事件

伊賀もも
 小さな頃から抱き続ける名探偵の夢。
 しかし、中学生になると、周囲はその夢を称賛しなくなってしまった。
 やがてももは、人前で夢を口にすることがなくなっていた。
 
 そして中学2年の春、上野あおが転校してきた。
 それから、ももとあおは探偵を目指す同志になった。

 しかし、あるひったくり事件をあおが解決したことをきっかけに、ももは自分がなりたいと思っていたもの、自分の理想がなぜか目の前に存在しているという事実に直面する。

 そんな中、文芸部とバレー部の合同夏合宿に参加したももたちは、殺人事件に巻き込まれてしまう。
 そこで事件に翻弄されるだけのももは、あおとのスペックの違いに自信を失ってしまう。
 しかし、あおに追い打ちをかけられたことで奮起したももは、あおを同志ではなくライバルとして認めるのであった。
 
上野あお
 仮に自分に才能があるとするならば、それは物事を理解できる才能だろう。
 そうなるとすぐにできないと嘆くクラスメイトがバカに見えてくる。
 そんなあおの冷めた眼差しに、みな距離を置き始めた。

 小学3年生のときにミステリ小説に出会ったあおは、やがて不可解な現象、隠された悪意を把握し理解する名探偵を目指すようになった。

 そして中学2年の春、東京から三重の伊賀市に引っ越したあおは、名探偵を志すももと出会った。
 そこであおは、同志であるもものお手並みを拝見することにした。

 そして、ひったくり事件の日、ももは探偵を志す身でありながら、犯行を目の前に立ち尽くすだけで何一つ観察できてはいなかった。そこであおは、ももに見切りをつけて見せつけるように推理を披露し、探偵としての実力の差を自覚させた。
 しかし、ももの落ちこんでいる顔を見たあおは、自分にはワトソン役が足りないということに気づく。この絶望したももをワトソン役として育てていけば、二人一緒に開花できるのではないか。
 しかし、それには名探偵を夢見ているももを、ワトソン役にするために誘導する必要があった。

 そして、夏合宿の最中に起きた殺人事件。
 事件に遭遇したときのももは、ひったくりのときの二の舞になっていた。以降ももは、自信を喪失してしまった。
 しかし、ももがワトソン役になる前に諦めては困るため、あおはあえて追い打ちをかけて、ももを奮起させた。

 その後、ももの推理を聞かされたあおは、その推理が正しいということを知る。
 どう見てもももは探偵としての素質を欠いている。だがもしかすると、自分とは違った意味で、探偵にふさわしい能力を有しているのかもしれない。直感に優れた探偵、自分にはない閃きを持った探偵として。
 しかし、きっとももは、そこから論理的思考を展開することはまだできない。これからは、ももに自分がいなければ、探偵としては成立しないと思わせなければいけない。


 あおは長い間、世界は探偵と群衆の二つに別れているものと思いこんでいた。それが、世界は探偵と群衆とワトソン役の三つに分類できることを知った。
 それが今、世界はあおとももと群衆とワトソン役の四分割の様相を呈し始めている。

 深淵に無限に開いた合わせ鏡の奥の真理を探すかのように、あおはももの安らかな瞳を、そこに映る青の瞳に映るももの瞳をいつまでも見つめていた。