揺れ動く少女たちの心理を巧みに描いた “日常の謎” 短編集『卯月の雪のレター・レター』を読んでみた
こんばんは、masakimaryです。
今回は、青春ミステリの名手が贈る珠玉の短編集『卯月の雪のレター・レター』を紹介します。
※ネタバレ注意
内容ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
小袖は読書が好きなおとなしい高校生。
法事で祖父のもとを訪ねた際に、従妹から奇妙な質問をされる。
「死んだ人から、手紙って来ると思う?」
祖父宛に最近届いたという手紙は不可解な内容だったが、六年前に亡くなった祖母が昔に書いたもののようだ。
それがなぜいまごろになって? 誰かの悪戯なの?思い悩んだ小袖は、その手紙の謎をある人物に話すことに・・・。
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・小生意気リゲット
両親が他界し、二人で生活をする姉妹。
姉が懸命に仕事をする一方で、妹は姉に冷たく当たるような日々が続いていた。ある日、叔父や友人から妹の奇妙な行動を知らされる。
姉は、無理をして妹を引き取る必要はなかったのではないか、叔父夫婦に引き取ってもらったほうが幸せになれたのではないかと考えるようになってしまう。
なぜ妹は姉に冷たく当たるのか?
妹は、姉に隠れて絵を描いていた。奇妙な行動もそれが原因だった。姉の履歴書を見て、自分のせいで姉は絵を描くことを諦めてしまったと思い込み、姉と話をすることが怖くなってしまった。
・こそどろストレイ
同級生の家に遊びに訪れた水葉。
蔵へゲームを取りに行った同級生の妹から、父親の花瓶が無くなっていたことを知らされる。雪の上の足跡から、外から泥棒が入った形跡はなかった。
そして、同級生の姉から、自分が壊してしまったと告白される。しかし、彼女には犯行は不可能であった。
同級生の妹は、蔵へゲームを取りに行く際に猫を連れていた。その猫が花瓶を壊してしまい、妹はゲームの箱の中に花瓶を隠した。
・チョコレートに、躍る指
スズは、入院中の同級生・ヒナのもとを訪れていた。
ある事故のせいで話せなくなったスズは、ヒナの前ではパソコンで会話を行っていた。スズは、クラスでは浮いた存在であり入院中のヒナが、小学生の時の自分と同じであると感じていた。ヒナは、同級生の深海さんとしか打ち解けようとしなかったからだ。スズは、ヒナと深海さんの間には入れないと嫉妬を感じていた。
そして、スズは、ある秘密を抱えていた。
深海鈴音は事故で亡くなっていた。そして、ヒナは視力を失った。
ヒナの母親から深海さんのフリをしてほしいと頼まれたユリ(スズ)は、パソコンが読み上げる音声を通して会話を行っていた。
・狼少女の帰還
教育実習生として小学校を訪れた琴音。
授業を進めていく中で、大人びた少女・まいなと嘘つきと呼ばれる少女・咲良の存在が気になっていた。
ある日、咲良から、まいなの家で家政婦が泥棒をしているところを見たと告げられる。そのせいでいじめとも近い悪戯を受けてしまう咲良。
皆が信じない中、琴音は真相を探っていく。
まいなはクラスの中では中心人物であり、人気者であった。そして、まいなの母親はモデルであり、皆から憧れの対象とされていた。
しかし、再婚して母親が変わり、そのことを知られたくないと思い、友人に家政婦と紹介していた。
・卯月の雪のレター・レター
法事で祖父のもとを訪れた小袖は、従妹から六年前に亡くなった祖母の手紙が届いたと告げられる。それは、祖母が昔に書いたもののようであった。
思い悩んだ小袖は、駅前で歌を歌う女性・岬さんに話すことになる。話すうちに、祖父や祖母のことを何も知らなかったと思い知らされた小袖。
なぜいまごろになって手紙が届いたのか?
その手紙は、祖母の妹が書いたものであった。
昔は、恋愛を経て結婚することは稀であり、お見合いで結婚することが普通であった。そして、姉より先に縁談が回ってくることはなかったのだろう。
祖母の妹は、60年も前に手紙を届けようとしていたが、別れを告げるのは辛いと思い、なかなか手紙を出すことができなかった。