masakimary

静かに過ごしていきたい

場面緘黙症の女子学生が本やアプリなどを紹介するブログです。様々な記事を書いていきたいと考えています。何か気になることやご意見などありましたら、お気軽にコメントしてください。

学校生活に息苦しさを感じている女子中学生の憂鬱とかすかな希望を描き出す6つの物語『雨の降る日は学校に行かない』を読んでみた

 こんばんは、masakimaryです。

 今回は、6人の女子中学生の心を描く連作短編集『雨の降る日は学校に行かない』を紹介します。
 ※ネタバレ注意
 
内容ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 「先生。わたしたち、どうして学校に行かないといけないの?」
 中学生の憂鬱とかすかな希望を描き出す、切ない連作短編集。

 普通じゃなくて、ごめんなさい。生きにくい子で、ごめんなさい。
 ―表題作「雨の降る日は学校に行かない」

 昼下がりの保健室。そこは居場所のないサエとナツのささやかな楽園だった。けれどサエが突然“自分のクラスに戻る”と言い出して
 ―「ねぇ、卵の殻が付いている」

 “お父さん、お母さん、先立つ不幸をお許しください”。早朝の教室で、毎日手帳に書いていた架空の遺書。その手帳を偶然にも人気者の同級生が拾ってしまう
 ―「死にたいノート」

 揺れ動く6人の少女たちの心を描く6つのストーリー。

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・ねぇ、卵の殻が付いている
 保健室登校をするナツとサエ。
 ある日、サエが突然教室に戻りたいと言い出した。自分が見捨てられたような気がして素直に喜べないナツは、サエに冷たい言葉を浴びせてしまう。
 しかし、保健室の長谷部先生の言葉を受けて、保健室を出て、サエに謝りに行く決心をするナツ。そこで、サエから親の都合で転校することを告げられる。
 「この学校に通っていたこと、なかったことにするみたいに転校するのは逃げるみたいで癪だったから、最後くらい、ちゃんと教室に行こうと思ったの」
 サエの思いを聞いたナツは、時間はかかるかもしれないけれど、自分もサエが戦った教室という場所に戻りたいと感じるようになる。


・好きな人のいない教室
 地味な女子のなこは、可愛い女子や派手な女子の割合が高いクラスに圧迫感を覚えていた。隣の席のオタク系男子・岸田から、よく教科書を見せてほしいと頼まれるなこ。
 そして、クラスの派手な女子・塚本さんから、「わざと教科書を忘れて、気を引こうとしている」と冗談を言われてしまう。
 その後、いじめに発展し、なこは不登校になってしまう。
 しかし、岸田から送られてきた絵を見たことで、自分に嘘をついてまで、皆と合わせたってなんの解決にもならないと勇気づけられたなこは、再び学校に通えるようになる。


・死にたいノート
 毎日手帳に架空の遺書を書く涼。
 どんな理由があれば死んでもいいんだろう?
 ある日、人気者の同級生・河田さんに手帳を拾われてしまう。中身を見られ、手帳の持ち主を河田さんと一緒に探すことになった涼。持ち主が自分だと言えず、河田さんの友達・あっちゃんも加わり、大袈裟な問題に発展してしまう。
 「死にたいって、生きたいってことだよ。幸せになりたいってことだよ」
 河田さんの言葉を聞いて動揺する涼。
 涼は、河田さんたちを騙す一方で、待っていてくれる人がいることが泣きたいくらいに嬉しいと感じていた。
 死にたい、そう思った数だけ、自分はきっと、生きていたい。そう思った数だけ、自分はきっと、幸せになりたい。
 もう自分にはノートは必要ない、伝わらないかもしれないけれど、言葉で伝えようと涼は決心するのであった。


・プリーツ・カースト
 クラスで一番輝いている梓のグループにいるエリ。
 エリの小学校時代の友達・真由の話になり、不満を言って笑い合う。そして、エリの何気ない行動がきっかけで、いじめに発展してしまう。自分が原因なこともあり、なかなかやめようと言い出せないエリ。
 その後、教室を飛び出してしまった真由を追いかけたエリは、真由から合唱部コンサートのプリントを受け取る。
 スカートの長さは、教室での地位を表す。
 どうして、スカートの長さが違うだけで、こんなにも違う生き方をしているのだろう。もしかしたら、自分は勘違いしているのかもしれない。どう考えたって、醜い生き物は、自分たちの方だ。
 梓から遊びに誘われたエリは、ポケットにあるプリントの感触を確かめ、答えを返すのであった。


・放課後のピント合わせ
 教室に居場所がないと感じるしおりは、露出の高い写真をアップロードすることでコメントをもらい、存在意義を見出だしていた。
 ある日、コメントが伸び悩んでいることを知ったしおりは、学校で写真を撮っている場面を、担任である柳先生に見られてしまう。写真好きと勘違いされ、先生からフィルムカメラを受け取ったが、何を撮ればいいのか分からないしおり。
 そこで偶然にも同級生のナオと出会う。ナオとは小学校からの付き合いであったが、いつの間にか、しおりは置いてきぼりになっていた。
 しかし、フィルムカメラを通して、しおりは教室に居場所ができ、スマートフォンで写真をアップロードすることはないだろうと感じるのであった。


・雨の降る日は学校に行かない
 教室でいじめを受けているサエ。
 クラスの人気者である飯島さんに対する既読無視がきっかけであった。飯島さんの人望は、教室の外にも影響を及ぼしていた。親にも担任にも相談ができないサエは、ついに不登校になってしまう。
 その後、保健室の長谷部先生の言葉を受けて、学校に保健室登校をすることになったサエ。そこで、新たな友達・ナツと出会うことになった。

 私たちは自由だ。学校だけが、私たちの世界ではない。私は、私なんだって。声を上げ続けたい。私は、私のままで、誰かと繋がっていたかったから。