masakimary

静かに過ごしていきたい

場面緘黙症の女子学生が本やアプリなどを紹介するブログです。様々な記事を書いていきたいと考えています。何か気になることやご意見などありましたら、お気軽にコメントしてください。

魅惑的な女性バリスタが解き明かす日常の謎『珈琲店タレーランの事件簿 また会えたなら、あなたの淹れた珈琲を』を読んでみた

 こんばんは、masakimaryです。

 今回は、軽妙な会話とキャラが炸裂する鮮烈なデビュー作『珈琲店タレーランの事件簿 また会えたなら、あなたの淹れた珈琲を』
 ※ネタバレ注意

内容ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 京都の小路の一角に、ひっそりと店を構える珈琲店タレーラン」。
 恋人と喧嘩した主人公は、偶然に導かれて入ったこの店で、運命の出会いを果たす。長年追い求めた理想の珈琲と、魅惑的な女性バリスタ・切間美星だ。
 美星の聡明な頭脳は、店に持ち込まれる日常の謎を、鮮やかに解き明かしていく。だが美星には、秘められた過去がありーーー。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

プロローグ〜第1章 事件は二度目の来店で
 ーーー見つけた!アオヤマは遂に理想のコーヒーに出会った。


 色々あって彼女と別れたアオヤマは、払い損ねた珈琲代を払うため、再びタレーランを訪れた。
 そこで、とても聡明な女性バリスタ・切間美星から、珈琲やタレーランについての説明を受けるのであった。

 会計を済ませたアオヤマは、自分の傘が取り違えられたことに気づく。
 彼の傘の色はモスグリーン、残っていた傘の色は赤。どう考えても、取り違うはずがない。そして、傘を持ち出すことが出来たのは、先客であった女子大生3人組だけであった。


 その中に、アオヤマの知り合いの女性がいた。彼女は、アオヤマの元カノの親友・戸部奈美子であった。
 彼女は、偶然にも美星と親しげに話すアオヤマを見かけ、彼を「別れたばかりで別の女を口説くナンパ男」と勘違いした。そして、友人を遠ざけつつ、アオヤマをタレーランに留まらせてビンタをお見舞いするために、彼の傘を持ち出したのであった。


第2章 ビタースウィート・ブラック
 アオヤマの親戚であるリカは、彼氏のフェイスブックの呟きを見て、アポなしで彼のアパートを訪れた。そして、彼が飲めないはずのブラック珈琲が机に置いてあるのを見つけてしまう。
 リカは、真相を確かめるために祇園祭に行き、アオヤマに浮気の証拠写真を撮影してきてほしいという。実際に、彼は別の女性と手を繋ぎ、祇園祭を楽しんでいた。
 

 リカは帰国子女であり、どちらかといえば英語が堪能であった。
 アメリカでは、日本と違って明確な≪告白≫の文化が無い。彼女は、デートの日に言われた「付き合って」という言葉を別の意味に捉えてしまった。同様に、ブラック珈琲も外国では、ミルクの有無のみを表す。つまり、一瞬見ただけではブラックなのかどうかも分からない。
 リカは様々な勘違いによって、自分と彼が交際しているという幻影を見ていたのであった。


第3章 乳白色にハートを秘める
 アオヤマと美星は連れ立って、他店に珈琲を飲みに来ていた。その時、窓外に走り去る少年の姿が見えた。アオヤマは、その少年を見るのは初めてではないと言い、自らの体験談を話し出した。

 “少年との出会いはスーパーの前でした。ハーフで、少年は健斗と名乗りました。
 サッカーボールを持っていて、彼は水分補給のために、「牛乳を買うなら分けて欲しい」と頼んできました。買い与えたその後も、健斗とは例のスーパーで出くわすことがありました。彼は、いつも一人でサッカーをしていたらしいので、教えてあげると約束しました。
 しかし送り火の日に、このカフェの窓から健斗が走り去っていくのが見えたんです。追いかけると、全身ボロボロになった彼が目に涙を溜めていました。理由を聞いても話さないので親に電話しようとしたら、そのまま走り去ってしまったんです。”

 話し終えた後、3人の少年が給食袋を持って歩いて行くのが見えた。美星とアオヤマはすぐに追いかけて、河原で少年たちを発見した。そこには健斗もいて、あの給食袋に入っていたのは仔猫であった。
 健斗は、家で仔猫を飼えないため、小学校でこっそりと飼っていた。しかし、3人の少年に見つかってしまい、給食袋で連れ去られてしまった。彼はハーフのために、3人からいじめられていたのである。


 その後、仔猫はタレーランで飼われることになる。

 そして、アオヤマは、健斗と直接会ったわけではなく、送り火の日の話を盗み聞きして、自分の体験談のように話しただけであった。


第4章 盤上チェイス
 自転車で鴨川の河川敷に行くと、偶然にも元カノの虎谷真美と出会った。アオヤマは慌てて逃げ出し、電車を使ってタレーランに逃げ込んだが、何故かすぐに彼女は追い付いてしまった。彼女はタレーランを知らないはずなのに・・・。
 真美は復縁を迫ったが、アオヤマは美星を盾にして、「この人が僕の新しい恋人なんだ」と言って、彼女を諦めさせようとした。
しかし、「認めない。これでおしまいだなんて思わないで」と言って、彼女は涙を我慢しながら店を出ていった。


 何故、虎谷真美はタレーランを知っていたのか?
 その理由は、タレーランのオーナーである藻川氏が、彼女の親友である戸部奈美子に連絡先を教えていたからである。
 そのとき美星は同席していなかったので、その事を知らなかったのであった。

美星は、「彼女は諦めようとしていたはずです。どうか、逃げ出さないでください。彼女のためだけでなく、あなたのためでもあるのです」と、アオヤマに忠告するのであった。


第5章 past, present, f*****?
 アオヤマは、≪京都ココロフト≫という雑貨店を訪れた。
 彼がダーツの矢に一目惚れしていると、社員と思われる男性が「試投してみませんか?」と声をかけてきた。試しに投げると矢は的から大きく外れ、携帯をいじる女性店員には呆れ顔で見られてしまった。自棄になり目を閉じて投げたところ、なんと真ん中に命中した。購入を決意したアオヤマだが、矢は既に売れてしまい無くなっていた。

 店を出たアオヤマは、偶然にも美星と出会う。
 美星を居酒屋に誘ったアオヤマは、彼女から誕生日プレゼントをもらった。それは、あのダーツの矢であった。
 驚いたアオヤマは美星に尋ねたが、彼女は「これは宿題にします」と言って教えてくれなかった。

 その後、アオヤマはダーツをすすめてきたあの男性に出会った。彼は胡内波和と名乗り、美星の知り合いらしい。
「美星には暗い過去がある・・・。君にはそれを背負う覚悟があるか?」
 そう切り出した胡内は、彼女の過去を話し出した。

 昔の美星は、客に積極的に声をかけていた。ある日訪れていた男性は、それがきっかけでストーカーになり、彼女を手にかけようとした事があった。それ以来彼女は酷く怯え、客に声をかけようとしなくなった・・・。


 何故美星が自分の欲しかったものを知っていたのか?
 アオヤマは、自分の推理を披露した。
 それは、美星には協力者がいたというものである。彼女が紹介した人物は、あの携帯をいじっていた女性店員・水山晶子であった。二人は携帯で連絡を取り合い、晶子がプレゼントを居酒屋に届けたのであった。

 アオヤマは胡内が協力者だと思っていた。
 しかし、彼こそが美星のストーカーであり、彼女はその名前を聞いた途端に卒倒してしまう。


第6章 Animals in the closed room
 アオヤマが友人から貰った“猿珈琲”に興味をもった美星は、彼のアパートを訪れた。
 そして二人は、ペーパーフィルターを買いにコンビニへ行った。部屋に戻ると、アオヤマが用意しておいたプレゼントの中身が、傷だらけの状態になっていた。


 部屋の中に何者かが潜んでいると考えたが、その正体は、タレーランで飼うことになった仔猫だった。
 仔猫は、美星のバッグに隠れたまま長い時間を過ごし、気が立っていたので部屋中を暴れまわった後、クローゼットに入り眠ってしまったのであった。


第7章 また会えたなら、あなたの淹れた珈琲を~エピローグ
 胡内がアオヤマを襲い、彼は入院することになった。アオヤマは、美星から胡内を遠ざけるためにある作戦に出る。
 胡内に電話をかけて、「自分はもう美星と別れる」と言って、彼を誘い出した。誘いに乗った胡内は、アオヤマが誓いを破った事に怒り、背後から美星に襲いかかった。
 そして次の瞬間、胡内は地面に叩きつけられていたのであった・・・。

 その少し前、アオヤマはタレーランを訪れた。
 そこで、美星の珈琲は味が落ちたので、二度とここには来ないだろうと告げた。しかし美星は、アオヤマもバリスタであり、本当の名前が青野大和である事を見抜いていた。
 青野は珈琲の味を盗むために客として通っていたと美星に告げ、店外に出るのであった。


 胡内を撃退したのは、青野の元カノである虎谷真美だった。青野は真美との復縁を条件に、柔道同好会に所属する彼女に協力を頼んだのだ。
 青野は、真美と一緒にアパートに帰った。美星からもらったメッセージに気付いた青野は、それに目を通した。

 “青野大和さん、守ってくれてありがとう。いつかまた会えたなら、あなたの淹れた珈琲をきっと私にも飲ませてくださいね。いつまでも、その日を待っていますから。”

 そして、青野は、自分の店を持って独立するのが夢であると真美に話したのであった。


 青野は、店の制服でタレーランを訪れていた。真美にはあっさりとフラれてしまった。
 そして、美星は、青野の珈琲を飲ませて欲しいと頼むのであった。